十輪寺ブログ
2.172022
十輪寺の楠
十輪寺にはとても大きな楠があります。この楠は、辯天宗第一世管長、智祥猊下がご幼少のころ植えられたものです。ご自身の半生を振り返りお書きになられた「無量の日々」の中に楠のお話が出てきます。
十輪寺の境内には見上げるような大きな楠がありますが、あの木は、実は私が植えたものです。
十輪寺へ入って間もなく、十歳か十一歳のくらいのときだったと思います。そのころ、役場から神社やお寺へ苗木の配布がありました。十輪寺にも二、三本配られてきたのですが、一本もあればいいということで、一本だけいただき、師匠がスコップで穴を掘ってくれまして、私が植えました。小さな苗木だったので“うまく根づいてくれるやろうか ”と心配しておったんですが、雨に打たれ、風に揺られて、雪に押しつぶされそうになりながらも、しっかり根を張ってくれました。
年齢を重ね重ねて、もう六十年にもなります。今では、ひと抱えに余るほど幹も太く、高さも十数メートルはあるでしょうか。天に向かって両手を上げるように枝も伸びて葉も青々と茂り、それはみごとな楠になりました。
あの楠を見るたびに、いつも私は感慨を覚えるのです。
小さな苗木のときに十輪寺の土に植えられたあの楠こそ、八歳で仏門に入った私の姿そのままではないかと思うのです。そして、今まで述べてきたことや、その後大きく変転していく私の運命の在りようを、つぶさに見守っていてくれたのが、あの楠ではないかとも思えてきます。とてもなつかしい思い出のある木といえましょう。
「無量の日々より」
第一世管長さまにとってはとても大事な楠だったようです。楠はとても成長が早く、枝葉がどんどん大きくなります。ほっておくと台風など大風が吹くときに枝が折れ、近隣にご迷惑をおかけすることになりますので、定期的に剪定をしています。これだけの高さになると剪定も大変で、植木屋さんが長いはしごを使って一日がかりの作業になります。第一世管長さまの思い出の楠。これからも大事にお世話をさせていただきます。
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