十輪寺ブログ
8.182023
無縁法界
何かと忙しいお盆も終わりました。今年は、例年に比べて暑さが厳しいお盆になりましたが、盂蘭盆会法要、そして、棚経などお盆の諸行事を無事務めさせていただくことができました。
お盆の期間中に、僧侶が檀家さまのご家庭を訪問し、ご先祖のご供養をさせていただくことを棚経(たなぎょう)といいます。十輪寺は、祖父の時代に檀家数が最も多く、盆の期間内に棚経を終えるのは大変だったようです。今では、檀家数が祖父の時代に比べて少なくなっており、しかも、息子たちが手伝ってくれるので祖父の時代よりも、棚経は大幅に楽になっています。反面、近年、五條市外へお移りになる方が増えてきており、市外への棚経の回数が多くなってきました。今年の8月11日の棚経は、6軒だけでしたが、訪問先が松阪、大津、吹田、大阪市内、西宮、須磨の檀家さまでしたので、一日の走行距離は約400km!朝、6時出発、帰寺は、午後7時ごろと12時間を超える棚経になりました。距離があると棚経は大変ですが、遠方にお住まいの檀家さまより、今年もお盆のお参りに来てくださいとご連絡いただくのはなによりもうれしいものです。
無縁さんのお祀りの様子
お盆には、各檀家様に経木をお渡しします。経木は小さな塔婆で、各家庭のご先祖さまの戒名が書かれています。経木をお家に持って帰り、お盆の期間中、仏壇でお祀り(おまつり)いただくことになっています。その経木に先祖の戒名ではなく、無縁法界と書かれた経木があります。無縁法界とは、自分たちとご縁のないすべての方々の霊を意味し、その経木をお祀りし、すべての人びとの冥福をお祈りするのです。
真言宗では、お経をお唱えする際、一番最後に「回向文」をお唱えします。
願わくはこの功徳をもって
普(あまね)く一切に及ぼし
我らと衆生と皆共に
仏道を成ぜんことを
回向文を通して、自分一人だけ悟るのではなく、すべての人が悟ることができますようにとお祈りするのです。仏教では自分だけが悟り、幸せを手に入れるのではなく、全ての人びとが悟りを得ることができるように願うことが大事と説きます。そして、お盆の時も、自分たちだけの先祖をご供養するのではなく、ありとあらゆる方々の冥福をお祈りしましょうというのが無縁法界の経木(十輪寺では、略して「無縁さん」といいます)なのです。
無縁法界の経木のお祀りのしかたは、各家庭によって違いますが、肝心なのは仏壇に入れないこと。玄関先や縁側、軒下に小さな壇(箱のようなものでも構いません)を設け、無縁法界の経木をお祀りします。昔は、宗派を問わずお盆のお参りをされている僧侶を招き入れ、無縁さんのお祈りをしていただいたそうです。
無縁法界、小さな経木ですが、生きとし生けるもの全ての平安を願う仏教の神髄がこもっているように感じます。
*無縁法界の経木は希望される方のみにお渡ししています。ご希望の際はお盆の経木をお寺でいただく際にお声をおかけください。
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